GP & PEOPLE

GPと人

イズデプスキ 龍也Tatsuya Izdebski

Profile

氏名 イズデプスキ 龍也
所属 昭和医科大学 医学部 産婦人科学講座/医学教育学講座
専門 周産期医学、超音波医学、医学教育学

産婦人科医の学びを、個人の努力から仕組みへ

臨床の中で見えてきた、
学びのばらつき

私は産婦人科医として診療に携わりながら、日々の臨床の中で多くのことを学んできました。産婦人科は、外来、病棟、分娩、手術、救急対応など、幅広い場面で判断と手技が求められる診療科です。その一つひとつの経験が医師としての成長につながる一方で、学びの機会は必ずしも均等ではありません。
同じ臨床現場にいても、どのような症例に出会うか、どのような指導を受けるか、どのように振り返る機会があるかによって、学びの深さは大きく変わります。教育は大切だと誰もが感じている一方で、忙しい臨床の中では、どうしても個々の指導医の熱意や経験に依存しやすい側面があります。
そのような経験を通じて、産婦人科医の成長を支えるためには、個人の努力だけでなく、学びを支える仕組みそのものを整えていく必要があると考えるようになりました。

若手が学び続けられる
場をつくる

私が医学教育に強く関心を持つようになったきっかけの一つは、若手医師や医学生と関わる活動でした。日本産科婦人科学会の未来委員会・若手委員会では、若手産婦人科医や医学生が、施設や地域を越えてつながり、学びあえる場づくりに取り組んできました。
また、オンライン勉強会や若手向けの教育企画を通じて、産婦人科の魅力や学び方を伝える活動にも関わってきました。コロナ禍を経て、オンラインでの学びは一気に身近なものになりました。直接会えないからこそ、地域や所属を越えてつながることができる。そうした可能性を実感したことは、私にとって大きな転機でした。
産婦人科を学ぶ人たちが、「ここでなら学べる」「相談できる」「もう少し頑張ってみよう」と思える場をつくること。それは、若手医師を支えるだけでなく、将来の産婦人科医療を支えることにもつながると感じています。

教育を
“経験”で終わらせず、
改善できる形にする

現在は、昭和医科大学医学部医学教育学講座に所属し、医学教育を専門的に学び、実践する立場になりました。そこで改めて感じているのは、教育は単なる経験や熱意だけではなく、設計し、評価し、改善していくことができる営みだということです。
臨床教育の現場には、見えにくいけれど大切な教育の価値がたくさんあります。たとえば、指導医の一言で学習者の行動が変わることがあります。安心して質問できる雰囲気が、学びを深めることもあります。一方で、学習者がどのような経験をして、何に困り、どこで成長しているのかは、必ずしも十分に可視化されていません。
私は、学習者の声や教育体験を丁寧に捉え、それを教育改善につなげることに関心を持っています。教育を「良い経験だった」で終わらせるのではなく、次の学習者によりよい形で届けられるようにする。そのための仕組みを、臨床現場と医学教育学の両方の視点から考えていきたいと思っています。

必要な人に、
必要な学びを届ける

医学教育に関わる中で、教育を届ける方法そのものも大切だと感じるようになりました。どれほど良い内容であっても、必要としている人に届かなければ、教育としての力を十分に発揮できません。
オンラインセミナー、動画教材、SNS、学習支援の仕組みなど、学びの入口は多様になっています。特に医学生や若手医師にとっては、正式な講義や研修だけでなく、日常の中でふと触れる情報が、学び始めるきっかけになることもあります。
もちろん、情報発信そのものが目的ではありません。大切なのは、学習者が必要なタイミングで必要な情報に出会い、次の行動につなげられることです。教育を一部の場に閉じ込めず、学びたい人に届く形に整えていくことも、これからの医学教育に必要な視点だと考えています。

学び続けられる
産婦人科医を増やすために

産婦人科は、臨床の幅が広く、学び続けることが求められる診療科です。だからこそ、医学生、臨床研修医、専攻医、若手専門医、そして指導医が、それぞれの段階で学び続けられる環境を整えることが重要だと思っています。
教育を一部の熱心な指導医だけに任せるのではなく、チームとして支え、組織として育てていく。そのような文化をつくることができれば、学ぶ側だけでなく、教える側にとっても持続可能な教育になるはずです。
臨床、教育、研究をつなぎながら、産婦人科医が安心して学び続けられる環境づくりに貢献していきたいと思っています。

産婦人科医・医学教育者に向けたメッセージ

教育というと、特別なスキルを持った人だけが担うもののように感じるかもしれません。しかし実際には、日々の声かけ、フィードバック、症例の振り返り、手技を見守る時間、その一つひとつが教育だと思っています。
忙しい臨床の中で、完璧な教育を行うことは簡単ではありません。それでも、少しずつ教育を良くしていくことはできます。大切なのは、一人で抱え込まず、同じ思いを持つ仲間と一緒に考え、仕組みにしていくことだと思います。
産婦人科医が学び続け、次の世代に安心してバトンを渡せるように。これからも、臨床現場と医学教育をつなぐ活動を続けていきたいです。