GP & PEOPLE

GPと人

上條 恭佑Kyosuke Kamijo

Profile

氏名 上條 恭佑
勤務先 長野市民病院
専門分野 産婦人科一般

地域から、学びの格差をなくす

カンボジアで学んだ
「医学教育の力」

産婦人科1年目に、医療ボランティアでカンボジアを訪れました。そこで求められていたのは診療だけでなく、現地の医師を育てることでした。外から来た医師が診ることのできる患者さんの数には限りがあります。一方で、現地の医師を教育し、その医師が次の医師を育てる「屋根瓦式」の連鎖が回り始めると、支えられる命は増えていきます。日本でも似た仕組みはありますが、「人手や資源が限られる環境では、教育が明日からの医療を変える」ことを、これほど直接的に実感したのは初めてでした。この経験が、私の医学教育への関心の原点になりました。

コロナ禍のオンライン
勉強会

COVID-19の流行で、学会や勉強会が相次いで中止になりました。若手医師にとって大切な学びと交流の機会が減り、自治医大卒として地域に勤務していた私は、どこか取り残されたように感じていました。そこで、県内の若手産婦人科医に声をかけて、母体死亡や希少症例を共有するオンライン勉強会を立ち上げました。学びの場ができただけでなく、県内に広く分散していた医師同士がつながり、気軽に相談できるネットワークが生まれたことは、想像以上の成果でした。勉強会は計10回開催し、26施設・284名が参加。制約の多い時期でしたが、オンラインだからこそ、地域の教育と交流の可能性を広げられたと感じています。

教育の地域格差の是正を目指して

オンライン勉強会で得た経験を活かし、現在は長野県の仲間と胎児超音波の勉強会を運営しています。さらに、全国から5,000名超の医師が登録するオンライン教育プラットフォーム「Online Surgeons Platform: OSP」にも関わり、「OSP抄読会」の企画・運営を担当しています。日本全国どこにいても平等に学べる、そんな教育の機会を届けたいと考えています。

指導補助スライドの整備

2022年から参加した若手委員会では、同じ志をもつ多くの仲間と出会い、多くの先生方に支えられて活動しました。リクルート活動に加えて、教育グループでは、2020年度の必修化に伴い整備されてきた指導補助スライドについて、前任の先生方から引き継ぎ、リーダーとして運用・改訂に取り組みました。産婦人科研修の必修化により、現場では「限られた時間で、一定の質を担保した指導」がより重要になっています。指導医の負担を軽くしつつ、指導の質を一定に保つ。そんな現場で使える教育ツールを目指しています。

見えにくい教育の価値を
形に

地域での医学教育活動が評価され、2025年6月の第18回へき地・地域医療学会にて、最優秀へき地医療功労者賞「髙久賞」を拝受しました。教育は成果が見えにくく、評価されにくい分野でもあります。だからこそ今回の受賞は、地域における医学教育の必要性を改めて確認する機会となりました。

産婦人科医学教育者に向けたメッセージ

地域で働くほど、「学びの機会の差」が医師としての成長の差になり得ることを実感します。私はその現場感覚を出発点に、教育の地域格差を少しでも是正したいという思いで教育に取り組んできました。
医学教育は、どうしても成果が見えにくく、評価されにくい領域です。けれど裏を返せば、まだ伸びしろの大きい“ブルーオーシャン”でもあります。これからは、教育を「頑張り」で終わらせず、問いにして、測って、言葉にして、残す。教育実践を教育研究へつなげ、次の世代への資産に変えていきたいと思います。同じ志をもつ全国の仲間とつながりながら、一緒に産婦人科の医学教育を盛り上げていきましょう!