GP & PEOPLE

GPと人

衛藤 英理子Eriko Eto

Profile

氏名 衛藤 英理子
勤務先 岡山大学病院
卒業年度 2004年度
専門分野 周産期

産婦人科領域ハイフレックス型
教育システムの構築

コロナ禍が医学教育現場に
与えてくれたもの

コロナ禍で突然、従来のクリニカルクラークシップはオンライン授業へ代替し、分娩見学も対面でのシミュレーション教育も不可能になりました。先行き不透明な中、学修者が置き去りになりかねない状況を打破するためにどうすればよいのか、医局員で協議を重ねたことは、教育者にとっても大いな学びとなりました。重要視したのは、学修者からの評価が高かったシミュレーション教育をいかに継続するかです。

産婦人科領域ハイフレックス型教育システムの構築

コロナ禍に目覚ましく普及したICTを駆使し、産婦人科領域の中でも周産期(経腟分娩モデル)での遠隔シミュレーションを利用したハイフレックス型教育システム(対面、同期オンライン、非同期オンライン授業を学修者が選択できる学修方法)を構築しました。中国四国産科婦人科学会Plus Oneセミナーで実践に移しました。

対面不可能でも臨場感を最大限追及した多施設同時遠隔分娩シミュレーター教育の実践

妊婦が破水入院してから微弱陣痛、陣痛促進、回旋異常、胎児機能不全、急速遂娩を経て分娩に至るという“仮想経腟分娩の実況中継”というシナリオをリアルタイム配信しました。内診、回旋の進行が手に取るように理解できるシミュレーターを会陰側、骨盤内側という多視点から近距離で撮影したVOD用動画を事前作成し、当日は分娩のフェーズごとにVODと講義を組み合わせ、医学生、研修医とはチャット機能で双方向コミュニケーションをとることで臨場感を高めた参加型プログラムを提供しました。

地方都市が一体となった教育活動の新展開

中国四国地方10大学をつないでの遠隔配信による同時教育によって、地方都市で地域医療を担う産婦人科医同士の結びつきを深める機会を提供できました。一施設ごとの学生、研修医へのリクルート活動にとどまらず、地方都市が一体となった教育活動を行うことで、地方全体の産婦人科医増加に貢献できれば嬉しく思います。将来、全国展開できる可能性も秘めたプロジェクトとなりました。

手技を指導することだけが教育ではない

医学生、研修医、専攻医、専門医…私たちはどの立場になっても、人と人との関わり合いの中で仕事をしていくものです。みんなで手技を指導することも教育ですが、例えばワークライフバランスに悩むケースでの道筋など、1対1でゆっくり対話してその人の価値観を引き出しアドバイスしていくことも、大切な教育活動だと考えています。

産婦人科医学教育者へ向けてメッセージ

臨床、研究と並んで教育も、指導者にとっては多大な時間と労力を要する分野であることは否めません。しかし、その困難や達成感を仲間と分かち合いながら、取り巻く環境が変化し続ける中でも時代に即した産婦人科教育について常に考える姿勢が持てたら素晴らしいなと思います。
卒前教育、卒後教育、専門研修、生涯教育へと、シームレスかつ効果的な教育体制を創り上げ充実させていくことを目指して、一緒に頑張りましょう!